春夏秋冬叢書 発行物「いるかの手紙」


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[いるかの手紙]

前半はまりんちゃんと、おじさんと、ポポの悲しくも美しい物語。
後半は海に全てを掛けた男の熱い体験記。
世界で一番小さないるか、すなめりの「ポポ」を通して
命の尊さを見つけに出掛けよう。

全280ページ。内カラー62ページ。

発売中

林 正道 著
挿絵/宮田香里
装幀/味岡伸太郎
B6判(186×128mm)
本文280頁(内カラー62頁)、ハードカバー
定価 3,000円(税別)
ISBN4-901835-04-1 C0395

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目次/はじめに/いるかの手紙/いるかの手紙写真帖
僕らはみんな生きている/海の生き物達


はじめに

最近、私は一通の手紙を受け取った。手紙には、「誰か僕のお母さんを探して。」と書かれていた。差し出し人はポポという小さないるか。こんな事を言うと、なんだフィクションかと思われるかもしれないが、本当の話である。私が手紙だと気付いたのは子供達に教わったから。私もまさかいるかが手紙を書くとは信じられなかった。しかし、これからする話は全て本当にあった出来事ばかりである。中には、あっと驚く様な事や、目や耳を塞ぎたくなる様な事も多いが、是非最後まで読み、自分自身で考えてみて欲しい。…






其の一[ポポからの手紙]

ある港に、すなめりという世界一小さないるかの母子が暮らしていた。子供の名前はポポ。この港の近くには、まりんちゃんという可愛い女の子が住んでいた。まりんちゃんはポポのことが大好き。
 まりんちゃんはポポが暮らすこの港に、ゴミがいっぱい浮かんでいるのが気になって仕方がなかった。ある日ゴミを拾おうと、手を伸ばすと、ポコッとポポが顔を出した。
 ポポは目の前のゴミをくわえて、ポイッと、まりんちゃんに渡すと、にっこり笑いながら、喋りかけてきた。
 「やあ、まりんちゃん。僕からの手紙だよ。ちゃんと読んでね!お願いだよ。僕たちの暮らしを知ったら、きっと読めるはずだから。」…






其の三[海は青くて綺麗なところ]

波しぶきが飛んでくる。とても気持ちのいい風が顔に当たった。小さな船の上には、たくさんの人が乗っていた。
 「海を見てごらん。」おじさんにそう言われ、海を見たまりんちゃんはびっくりした。青色で、海の底まで透けて見えていた。海の中からばんどういるかたちがキュウキュウ言いながら近寄ってきた。まりんちゃんは嬉しくて、嬉しくて、仕方がなかった。船に乗っている人たちも皆ニコニコしていた。
 「いるかたちが一緒に泳ごうと言ってるよ。」おじさんはそう言うと、まりんちゃんの手を取って海の中に飛び込んだ。…







其の六[どこだって、本当は綺麗だったんだ!]

まりんちゃんとおじさんは、色んな人たちと色んな所に出掛けた。色んなものを見てもらい、色んなことを考えて、色んなことに気付いてもらおうと頑張った。
 どこの海でも、一緒に行った人たちは、とびっきりの笑顔を見せてくれた。まりんちゃんとおじさんは、皆の笑顔を見るのが大好きだった。
 どこの海にも、すなめりや仲間たちがまだ頑張って暮らしていることが分かった。どこの海も昔は綺麗だった証拠だ。
 でも、どこの海もすなめりや仲間たちが少なくなっていた。そして、本来は青く綺麗な海が汚れていることも分かった。





其の八[いつか竜宮城も…]

真っ暗な砂浜。もう夜中のようだ。ここは、赤羽根町。「この砂浜は、竜宮城にやってきた赤海亀たちが、卵を産む所なんだよ。」と、おじさんが教えてくれた。
 「まりんちゃん、よーく耳を澄ましてごらん!何か聞こえてこないかい?」確かに何か聞こえる。プッハー、プッハー、でも、音のする方を見ても、何も見えない。それでも、じっと見つめていると、だんだん何かが見えてきた。凄く大きなもののようだ。プッハー、ザッザッ、プッハーザッザッ、どんどん音が近付いてきた。




其の九[河童の池]

チチチチ、ピピピピ。鳥たちの声が聞こえる。どうやら山の中のようだ。ここが海の始まり。雨が降って川になり、海へ流れていく。まりんちゃんは美しい山や川を見て少しだけ寂しくなった。ここはこんなに綺麗なのに海に着く頃には汚れてしまう。どうしてなのか、まりんちゃんはもちろんもう分かっていた。だからよけいに寂しくなってしまった。







いるかの手紙写真帖/僕らはみんな生きている/海の生き物達
すなめりを追い掛けながら、毎日の様に海に潜ってきた。その中で、まだいたのかと思う様な生き物や、あまり知られていない珍しい生き物まで、本当に色んな生き物達と出会ってきた。ほんのいくつかを紹介しよう。